KOZO MIYOSHI
8x10.jp

SOUTH WEST

800 St.David, AZ 1992

左手には、遥か遠く荒涼たる岩肌の山の頂きと、その上空、雲一つない抜けきった青空に、昼下がりの今、逆光になっている山の中腹から、見え隠れして空の部分に揺ったり雄大に、トレ−スを描く一つ番の鷹の二点。半砂漠に分けいり二つの小山を越えて、箱庭の際にいるような、足元から広大にひろがる、風景の源に立ちすくんでいる。これから一歩先は断崖絶壁、それから先は大海原の様な大半砂漠地が、遥か彼方地平線まで続いている。この距離感は何なんだろう。今までの体験の距離計では測れない。まるで方位計に磁石を近づけたよな、眩暈に似た不安感、そして、浮遊感。あの一つ番の二点の鷹だけが動いているこの世のすべてである。他のすべては過去にもこれから先にも微動だしないと思われる原風景。この完璧に近い営みの中、これ以上なにを望んでいるのだろう。この均衡のとれた対面をどうしてくれようか。あのわずかに羽ばたく二点の鷹と同様、写真をするほんの一瞬を下さい。1994 ツーソンにて